アーユルヴェーダで見るアトピー

まず、現代医学でアトピーはどのようにとらえられているかを概観してみましょう。
現代医学によるアプローチは多くの日本語で読めるサイトで紹介されていますので、ここでは深く言及しませんが、アーユルヴェーダの体質改善に取り組むとき、やはり現代医学の知見との併用がとても大切です。

残念ながら日本では、まだ、アーユルヴェーダだけで、アトピーに取り組めるほどの土壌がありませんので、一つの方法だけに走ることなく中道を行く くらいのおおらかな気持ちで、アーユルヴェーダの知恵から何かお役に立てるものが見つかったらうれしく思います。

現代医学から見たアトピー性皮膚炎

原因: アトピー性皮膚炎の主な原因は、遺伝的要因(皮膚バリア機能の異常)と環境的要因(衛生仮説、食生活の変化、大気汚染、ストレスなど)が複雑に絡み合って起こると考えられています。

1 皮膚バリア機能の異常: 皮膚の一番外側にある角層のバリア機能が低下していることが分かっています。これにより、アレルゲンや細菌などの異物が皮膚に侵入しやすくなり、免疫反応が過剰に引き起こされます。フィラグリン(filaggrin)というタンパク質の遺伝子変異が、このバリア機能低下の一因として知られています。

2 免疫系の異常: 免疫系が特定の刺激(アレルゲン)に対して過剰に反応し、炎症を引き起こします。特に、ヘルパーT細胞のうちのTh2細胞が活性化することが、病態に深く関わっているとされています。

3 環境要因: ダニ、ハウスダスト、花粉、食物などのアレルゲン、汗、乾燥、ストレスなどが症状を悪化させる要因となります。

つまり、アトピーは「アレルゲンが特定されていないアレルギー反応」と解釈することができます。このアレルゲンの範囲は、ダニやハウスダストなどの吸入アレルゲンだけでなく、皮膚への物理的な刺激(摩擦、汗、乾燥)、精神的なストレスなども含まれると考える必要があります。また、単なるアレルギー反応ではなく、免疫系が「過剰」に反応してしまうことが重要です。これは、遺伝的な体質(アトピー素因)皮膚のバリア機能の弱さによって引き起こされます。

治療: 症状を抑える対症療法が中心です。保湿やステロイド外用薬、免疫を標的とする生物学的製剤など、科学的根拠に基づいた治療が行われます。

根本治療: 免疫の過剰な反応を抑えるアレルゲン免疫療法が、根本治療に繋がる可能性として研究されていますが、アトピーは多要因性の病気であるため、単一の治療法では完治が難しいと考えられています。

アーユルヴェーダから見たアトピー性皮膚炎

まず概略を見ておきましょう。こののち深く掘り下げます。

原因: 消化不良によって生じる未消化物であるアーマ(毒素)の蓄積と、それによって乱された体内のエネルギーであるドーシャ(主にピッタ、カパ、そしてヴァータ)の不調和が根本的な原因だと考えられています。

治療: アーハラ(食事療法)、ヴィハーラ(生活習慣)、そしてハーブ療法を通じて、ドーシャのバランスを整え、アーマを排出することを目指します。アトピーを単なる皮膚の病気ではなく、体の内部から生じるものととらえます。

薬草: 治療では、「多くの場面でピッタを上げずにアーマを燃やす」という考え方が重要となります。アトピーにはピッタドーシャが大きくかかわっているためです。

しかし、消化力を上げるものはピッタを上げてしまうものが多いため、ニーム、センシンレン、ターメリック、パクチーといった苦味を持つ薬草が、炎症を抑えながら消化力を高める目的で使われます。

また、カンチャナーラや菩提樹の樹皮など、カパとピッタの両方を鎮静させる薬草も有効です。これらの薬草群は後ほどリスト化して紹介します。

現代医学とアーユルヴェーダの二つの視点の統合

一見矛盾するように見える両者の考え方は、同じ現象を異なる視点から説明していると解釈できます。

現代医学の「過剰な免疫反応」は、アーユルヴェーダの「アーマがドーシャ(特に免疫系に影響を与えるピッタ・カパ)を乱す注1 という考えと対応していると理解できます。

現代医学の「皮膚バリア機能の低下」は、アーユルヴェーダの「ドーシャの乱れが皮膚の健康を妨げる」注2という考え方と繋がります。

結論として、アトピー性皮膚炎の治療には、現代医学による科学的なアプローチと、アーユルヴェーダのような伝統医療が提唱する体質改善や生活習慣の見直しという多角的なアプローチが重要だと思われます。

「アーマ」と「現代医学の要因」の統合的解釈

1.不完全な代謝産物としてのアーマ:

現代医学では、腸内環境の乱れや食生活の変化(高脂肪食など)が、免疫系のバランスを崩す一因であるとされています。これは、消化しきれなかった食物が腸内で異常発酵したり、免疫を過剰に刺激する物質を生成したりすることと関連しています。アーユルヴェーダの「アーマ」は、まさにこの「消化不良によって生じた、免疫系に悪影響を及ぼす未処理の物質」を指していると考えられます。

2.皮膚バリア機能の低下とドーシャ:

現代医学では、皮膚のバリア機能が低下すると、アレルゲンや細菌などの異物が侵入しやすくなり、炎症が起こると考えます。一方、アーユルヴェーダでは、過剰なピッタドーシャが血液や組織に運ばれ、最終的に皮膚に蓄積することで、皮膚の健康な機能が妨げられるととらえます。これは「体内から皮膚のバリア機能を弱める物質が供給されている」というアーユルヴェーダの考えが、現代医学の「バリア機能低下」という現象を、別の角度から説明していると解釈できます。

3.過剰な免疫反応とドーシャ:

現代医学の観点では、免疫系が過剰にアレルゲンに反応することで炎症が引き起こされます。アーユルヴェーダでは、アーマがドーシャを混乱させ、正常な防御反応を妨げたり、過剰な反応を引き起こしたりすると考えます。これは、ドーシャが免疫系を直接的に刺激する、あるいは免疫細胞の正常な働きを阻害することで、現代医学で言うところの「免疫系の過剰反応」を引き起こしていると解釈できます。

つまり、アーユルヴェーダは、アトピー性皮膚炎という現象を「体内に蓄積した不完全な代謝産物が、体質的な不調和(ドーシャの乱れ)を通して、皮膚に現れる」という内因的な視点で捉えています。一方で、現代医学は「皮膚のバリア機能の低下」や「免疫系の過剰な反応」という生物学的なメカニズムに焦点を当てています。

両者は矛盾するものではなく、同じ現象を異なるスケールと視点から説明していると理解すれば、その考え方は矛盾しません。アーユルヴェーダが指摘する「体内からのアプローチ」と、現代医学が提供する「科学的メカニズムの解明」は、アトピー性皮膚炎の全体像をより深く理解するための、相互補完的なものと考えることができます。

アーユルヴェーダの治療法

アーユルヴェーダの治療は、①##ドーシャのバランスを整え、②毒素(アーマ)を排出することに重点を置きます。

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食事療法(アーハラ): 消化を助け、ドーシャのバランスを整える食事を推奨します。多くの場面でピッタを鎮めるために、辛いものや酸味のあるもの、揚げ物などを避け、消化の良い野菜や果物、ギー(Ghee)などを摂ることが推奨されます。

ハーブ療法:  炎症を抑えたり、血を浄化したりする特定のハーブが使われます。例として、**ニーム(Neem)は抗菌・抗炎症作用があり、血液を浄化するとされます。ターメリック(Turmeric)も抗炎症作用を持つことで知られています。

浄化療法(パンチャカルマ): 体内の過剰なドーシャとアーマを排出するためのデトックス治療です。瀉下療法(ヴィレーチャナ)や催吐療法(ヴァマナ)などが行われることがありますが、専門家の指導のもとで慎重に行われます。

外用療法: 炎症を鎮めるために、ハーブのペーストやオイルが使われます。ココナッツオイルやニームオイルなどが一般的に用いられます。

これらの治療法は、単に症状を抑えるだけでなく、体質そのものを改善し、病気の再発を防ぐことを目指します。

ではもう少し具体的に掘り下げてみましょう。

アーユルヴェーダではアトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis)をアーマとドーシャのバランスの乱れから生じるととらえており、ドーシャの種類によって治療方針が異なると考えます。

アトピー性皮膚炎の分類

アーユルヴェーダでは、アトピー性皮膚炎を主にピッタ性、カパ性、ヴァータ性の3つのタイプに分けます。これらのドーシャの組み合わせで症状が重なり合うこともあり、これをドゥヴァンドゥヴァジャ(Dwandwaja)と呼びます。

各ドーシャ別の鎮静法とアーマパーチャナ(アーマの排出)が重要視されます。

各ドーシャ別のアトピーの特徴と治療方針

1. ピッタ性アトピー
特徴: 皮膚に赤み、熱感、強いかゆみ、炎症、発疹、発熱が見られ、炎症がひどくなりがちです。ストレスや怒りによって症状が悪化しやすいとされます。

アーハラ(食事療法): ピッタを鎮めるために、温熱作用を持つ辛味、酸味、塩味を避けます。代わりに、甘味、苦味、渋味を多く摂ります。

例:避けるべき食品: 辛い香辛料、揚げ物、トマト、レモン、アルコール、肉類。

推奨される食品: 苦味の野菜(ゴーヤ、ケール)、甘い果物(ブドウ、メロン)、ギー、ココナッツ、緑豆。

ヴィハーラ(生活習慣): 精神的な興奮やストレスを避けることが重要です。

避けるべき習慣: 熱い風呂、過度な運動、直射日光。

推奨される習慣: 瞑想、ヨガ、冷水シャワー、散歩。

2. カパ性アトピー
特徴: 皮膚が湿っぽく、分泌物が多く、かゆみが強く、湿疹が慢性化し、皮膚が厚く、苔癬化することがあります。かゆみは夜間や湿気の多い環境で悪化しやすいとされます。

アーハラ(食事療法): カパを鎮めるために、甘味、酸味、塩味を避けます。代わりに、辛味、苦味、渋味を多く摂ります。

避けるべき食品: 乳製品(牛乳、チーズ)、冷たい飲み物、油っこいもの、砂糖。

推奨される食品: 生姜、ターメリックなどの香辛料、はちみつ、緑豆、苦味のある野菜。

ヴィハーラ(生活習慣): 停滞したエネルギーを動かすことが重要です。

避けるべき習慣: 昼寝、湿気の多い環境。

推奨される習慣: 活発な運動、ドライマッサージ(ガルシャナ)、サウナ。
 (ガルシャナは少女の出ている時でも行うことができますが掻き壊しなど傷があるときやピッタ性の要素が強い時(熱感があるとき)などはおこなわないでください。)

3. ヴァータ性アトピー
特徴: 皮膚が非常に乾燥し、ひび割れ、かゆみ、カサカサした鱗屑(りんせつ)が見られます。かゆみは寒さや乾燥によって悪化しやすいとされます。

アーハラ(食事療法): ヴァータを鎮めるために、乾燥した食品や冷たい食品、苦味、渋味を避けます。代わりに、温かく油分のあるもの、甘味、酸味、塩味を摂ります。

避けるべき食品: 生野菜、豆類、ドライフルーツ、炭酸飲料。

推奨される食品: ギー、温かいスープ、根菜、穀類、温かい牛乳。

ヴィハーラ(生活習慣): 保湿と規則正しい生活が重要です。

避けるべき習慣: 不規則な生活、過度な旅行、乾燥した場所。

推奨される習慣: オイルマッサージ(アビヤンガ)、十分な睡眠、温かい風呂。

4. ドゥヴァンドゥヴァジャ(混合性)
特徴: 複数のドーシャの症状が混在し、治療がより複雑になります。例えば、ピッタとカパの症状が両方見られる場合、赤みと湿っぽさが混在します。

治療方針: 主な症状を観察し、より強く乱れているドーシャから優先的に治療します。多くの場合、ピッタを鎮める治療から始め、その後、他のドーシャのバランスを整えるアプローチに移行します。食事や生活習慣も、その時々の症状に合わせて調整します。

これらのアプローチは、一人ひとりの体質と症状に合わせたオーダーメイドの治療であり、専門家の指導のもとで行うことが非常に重要です。

ストレスと免疫系の関係

ストレス(精神的・肉体的)が長期間続くと、体内でコルチゾールなどのストレスホルモンが過剰に分泌されます。これらのホルモンは、一時的には免疫反応を抑制する働きがありますが、慢性的なストレス下では免疫系のバランスを崩し、炎症を促進する方向へ傾けさせることが分かっています。

具体的には、以下のようなメカニズムでアトピー性皮膚炎の症状を悪化させます。

免疫細胞の活性化: ストレスは、アレルギー反応を引き起こす免疫細胞(肥満細胞や好酸球など)を活性化させます。これにより、ヒスタミンやサイトカインといった炎症性物質が大量に放出され、かゆみや湿疹が悪化します。

かゆみ・かき壊しサイクル: ストレスは脳内のかゆみを感じる神経を過敏にさせます。その結果、わずかな刺激でも強いかゆみを感じやすくなり、かき壊しを繰り返すことで皮膚のバリア機能がさらに低下し、炎症が慢性化する悪循環に陥ります。

皮膚バリア機能の低下: ストレスホルモンは、皮膚のバリア機能を保つためのタンパク質(例:フィラグリン)の生成を妨げることが示唆されています。これにより、外部からのアレルゲンや刺激物が侵入しやすくなり、炎症を引き起こしやすくなります。

ストレス軽減と症状改善
逆に、ストレスが軽減されると、これらの悪循環が断ち切られます。

ストレスホルモンの過剰分泌が抑えられ、免疫系のバランスが正常に戻ります。

かゆみを感じる神経の過敏性が落ち着き、かき壊しの頻度が減少します。

これにより、炎症が治まり、皮膚の状態が改善していきます。

したがって、アトピー性皮膚炎の治療において、スキンケアや薬物療法だけでなく、ストレスを管理し、リラックスする時間を持つことは、症状の改善に非常に重要な役割を果たします。

瞑想やヨーガによって症状が著しく改善した例を私たちはよく耳にします。

このようにアトピー性皮膚炎の根本的な解決には、単一の治療法に頼るのではなく、複数の要因(皮膚バリア機能、免疫反応、アレルゲン、ストレスなど)に多角的にアプローチすることが非常に重要です。

アーユルヴェーダは複雑なこれらの関係を難しい医学用語とは別のアプローチで感覚的に理解することを助けてくれます。

ここは間違えないで欲しい注意点!

アーユルヴェーダではアトピーはドーシャの乱れを整えることとアーマの排出がポイントと紹介しました。しかし、アーマは「未消化物」とか「毒素」と紹介されますが、これを体内にたまった、「毒」と解釈すると、大きな間違いにつながります。

アトピーの民間治療などでは、体内から「毒」を排出するためにアトピー性皮膚炎の症状が出ている、という考え方があります。

この「毒を排出」という考え方は、アトピー性皮膚炎の根本原因が体内にある見えない「毒」であり、皮膚の炎症はその「毒」を体外に出そうとする浄化作用だ、というものです。そのため、症状を薬で抑えることは毒の排出を妨げることになり、根本的な解決にならない、という主張がなされます。

これは現代医学的な視点からもアーユルヴェーダの視点からも理にかなっていません。

一見アーユルヴェーダの「アーマ」を排出するという視点と同じでは?と思われた方も多いかと思います。しかし、そこには大きな誤解があります。

なぜ理にかなっていないのか?

まず、症状は毒が出ていくプロセスではなく、免疫の過剰反応と炎症反応のなせる業です。つまり結果であって、プロセスではありませんから症状の改善へとつながる道筋とは関係ありません。

現代医学では、アトピー性皮膚炎は「毒素」の排出ではなく、「皮膚のバリア機能の異常」と 「免疫系の過剰な反応」が起きている状態と考えられています。

したがって、アトピー性皮膚炎の症状は「毒素排出」という身体の自然なプロセスではなく、「皮膚バリアの低下」と「過剰な免疫反応」がおきているされる病的な状態そのものです。

アーユルヴェーダの視点から言えば、アーマは免疫系を暴走させ、誤反応を誘発する要因であり、症状としてあらわれているものではありません。アーマはアーマとしてパーチャナ(燃やし尽くし、排出)しなければいけません。症状として排出されるものではありませんので、誤解しないでください。

「荒治療」の危険性

症状を無理に放置したり、毒素の排出ととらえ、あえて悪化させるような「荒治療」は非常に危険です。

皮膚の損傷: かゆみや炎症を放置すると、かき壊しがさらにひどくなり、皮膚の損傷が進みます。これにより、細菌感染のリスクが大幅に高まり、とびひや蜂窩織炎(ほうかしきえん)といった重篤な皮膚感染症を引き起こす可能性があります。

炎症の悪化: 炎症のサイクルが断ち切れないと、症状がさらに慢性化し、皮膚が硬くゴワゴワになる(苔癬化)など、より治療が難しくなる場合があります。

QOL(生活の質)の低下: 強いかゆみや見た目の症状は、睡眠不足、集中力の低下、精神的なストレスにつながり、患者さんの生活の質を著しく損ないます。

結論として、アトピー性皮膚炎は放置すれば治るものではなく、適切に治療をして炎症をコントロールすることが、皮膚の状態を改善し、悪化を防ぐために最も重要です。

信頼できる医療機関で専門医に相談し、症状をコントロールすること、また、もし可能ならばアーユルヴェーダ理論に精通した専門家のアドバイスに従った適切な体質改善の併用をすることをお勧めします。

アーユルヴェーダで使われるアーマパーチャナ薬

アーユルヴェーダでは、アトピー性皮膚炎の治療において、多くの場合ピッタを上げずにアーマを消化する働きを持つ薬草が複合的に使用されます。

これらは、単一の薬草として使われることもあれば、複数の薬草を組み合わせて使われることもあります。

アトピー性皮膚炎の多くはピッタの乱れが関与しているため、アーマを燃やす(消化する)ためにピッタをさらに上げてしまうと、かえって炎症や発疹を悪化させる危険性があります。そのため、ピッタを鎮静させつつ、アーマを穏やかに消化する薬草を選ぶことは、治療成功の鍵となります。

アーユルヴェーダの治療原則である「ニダーナ・パリヴァルジャナ(原因の回避)」と「サンショーダナ(浄化)とサンシャマナ(鎮静)」に合致するように考えます。

治療の第一歩は、症状を引き起こしているドーシャ(アトピーの場合、ピッタの乱れが多いので、ここではピッタを中心に解説します)を悪化させないことです。

その上で、消化力(アグニ)を穏やかに高め、体内のアーマを消化・排出するアプローチを取ります。

この二つの目標を同時に達成するために、「ピッタを上げずにアーマを燃やす」という発想が生まれます。つまり、熱すぎず、鋭すぎず、しかし消化力を持つ薬草が求められます。

1. アーマパーチャナ(未消化物・毒素の消化)に特化した薬草

これらの薬草は、消化力(アグニ)を穏やかに高め、アトピーの根本原因とされる体内のアーマを燃やすことで、症状の改善を目指します。

ニーム(Neem, Azadirachta indica): 非常に強力な苦味を持ち、アーマを消化し、血液と肝臓を浄化する代表的なハーブ。

センシンレン(Andrographis paniculata): 「苦味の王様」と呼ばれ、特にピッタを上げずにアーマを消化する働きに優れる。

ジーラカ(Cumin, Cuminum cyminum): 消化力を促進し、アーマを燃やす。

パクチー(Coriander, Coriandrum sativum): 冷却作用でピッタを鎮めつつ、穏やかに消化を助ける。

カルダモン(Cardamom, Elettaria cardamomum): 消化を助け、アーマを消化する。

2. 複数のドーシャを鎮静する苦味強壮薬

これらの薬草は、アトピー性皮膚炎に多く見られるピッタとカパの両方の不調和に働きかけ、炎症や分泌物を抑える目的で用いられます。

グドゥチ(Guduchi, Tinospora cordifolia): 免疫系を調整し、ピッタとカパの両方を鎮静させる。

アルジュナ(Arjuna, Terminalia arjuna): 血液浄化と抗炎症作用で、ピッタとカパを鎮静する。

カンチャナーラ(Kanchanara, Bauhinia variegata): カパを整え、リンパ系や腺組織の浄化に有効。

ウドゥンバラ(Udumbara, Ficus racemosa): 消化器系の炎症を和らげ、ピッタを鎮める。

菩提樹(Ashvattha, Ficus religiosa)とサーラ(Sala, Shorea robusta)の樹皮: どちらも渋味と苦味を持ち、皮膚病に特化した薬として使われる。

サキシマハマボウ(Pārasa-pippala, Thespesia populnea): 苦味と渋味でピッタとカパを鎮静し、湿疹や潰瘍に有効。

3. ドーシャ別・内服および外用薬草

特定のドーシャの症状に特化して、内服または外用で使われる薬草やオイルです。

ピッタ性アトピー(熱感、炎症、赤み)

内服: アムラ(Amla)、シャタバリ(Shatavari)、アロエベラ(Aloe vera)

外用: ココナッツオイル(Coconut oil)、サンダルウッド(Sandalwood)、ベチバー(Vetiver)

カパ性アトピー(湿疹、分泌物、かゆみ)

内服: トリファラ(Triphala)、ターメリック(Turmeric)

外用: ニームオイル(Neem oil)、ターメリック

ヴァータ性アトピー(乾燥、ひび割れ、カサつき)

内服: シャタバリ(Shatavari)、アロエベラ(Aloe vera)

外用: ギー(Ghee)、セサミオイル(Sesame oil)