レモングラス

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レモングラス(Cymbopogon citratus)はスリランカと南インド原産で(諸説あり)、
現在アメリカとアジアの熱帯地域で広く栽培されています。

香料や香味料として、民間療法では鎮痙薬、降圧薬、抗けいれん薬、鎮痛薬、
制吐薬、鎮咳薬、抗リウマチ薬、防腐薬、神経や胃腸の障害や発熱の治療薬として使用されます。
またレモングラスは、抗菌、下痢止め、抗酸化剤としても使用されます。

レモングラスはアーユルヴェーダでも、とてもよく使われる熱帯性のハーブです。
一般的には2種類のハーブがレモングラスと呼ばれています。

一つは学名Cymbopogon citratus で、西インドタイプと呼ばれます。

もう一つは学名Cymbopogon flexuosusで、東インドタイプ と呼ばれています。

他にもインドに行くとさらに何種類かのレモングラスがあるようですが、
専門家の中でも種の混乱が見られ、詳細は謎です。

ですので日本では、東インドタイプと西インドタイプの2種類を覚えておけばいいでしょう

西インドタイプ(Cymbopogon citratus )が、より一般的で、背は相対的に低く1mくらいです。
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幹は白みを帯びていて柔らかいので、根元を細かく刻んで料理にも良くつかわれます。
寒さにも比較的強いので、冬には葉の多くが枯れますが、根だけが生き残って屋外でも越冬します。
日本で育てられる多くがこちらのタイプになります。
 

東インドタイプ(Cymbopogon flexuosus)は日本では沖縄で多く育てられています。

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幹はやや赤みを帯びていて、大きくなると節を持ち2m以上の大きさまで育ちます。 
大きく育つと中心に竹のような節が出来てきて、葉の付け根のあたりが赤みを帯びてきます。
秋に長いものだと2mを超えるような穂が出ます。
レモンの香りがする成分はこちらの方が多いです。寒さに弱いので本州では戸外で越冬できません。
長期保存に向くのでアロマなどではこちらの品種を使うことが多いです。
                
香りが強いのは東インドタイプですが、食品やハーブティーにするのには香りがマイルドで優しい
西インドタイプが多いようです。

メディカルプランツとしての効果・効能的には同じですが、私が見た範囲でいえば、
マッサージなどの外用に使う際には精油成分が多いので、東インドタイプ、
内服する際には西インドタイプを使った論文が多いようです。

では、アーユルヴェーダではどのように使われているのか、もう少し詳しく見ていきましょう。

レモングラス 学名 Cymbopogon citratus
アーユルヴェーダ名 プ・トゥルナ

ラサ(味) カトゥ(辛味)・ ティクタ(苦味) アムラ(酸味)

グナ(属性) ラグー(軽性) ティクシュナ(鋭性・浸透性)  ルクシャ (乾燥性)
ヴィールヤ(薬力)  シータ(冷性)

注 発汗による解熱効果 ヴィールヤをウシュナとする文献も多くあります。

ヴィパーカ  カトゥ
ドーシャへの影響 ピッタ・カパを減らす 過剰にとるとヴァータを上げる

スロータスに対する働きかけ 消化器系・呼吸器系・ 女性の生殖器系  尿・汗

作用

・消化の問題を改善・予防する

レモングラスには冷却エネルギーがあり、ピッタを悪化させずにアグニを強め、胃を落ち着かせ、消化機能を調整します。

アーマパーチャナ (毒素を排出) とディーパナ(食欲を促進する)の力を持ちます。

胃潰瘍の予防・吐き気などを鎮める効果や
レモングラスは消化に関連するすべての問題に役立つとされ、胃の痛みを緩和します。

アパーナヴァータとサマーナヴァータを調整するので膨満、腸ガス・便秘に起因するような おなかの痛みにも有効です。
葉の粉は下痢にも有効で粉末を水で小さじ1~2杯 1日2回のむと良いそうです。

(海外ではレモングラスはパウダーとして、腸の動きを調整するものとして販売されています。
特にそこで謳われている効果・効能は有毒廃棄物の除去を促進することです。

・コレステロールを減らす
 
血管内の脂質の蓄積を制御し動脈硬化を予防します。
コレステロールを適切で健康的なレベルに維持するのに役立ちます。
またレモングラスは、腸からのコレステロールの吸収を制限し、心臓全体の健康を促進することでも知られています。

・血圧を下げる

レモングラスにはカリウムが豊富で、私たちの体内での尿の生成を増やし、血液循環を刺激して血圧を下げます。

血液循環を高めることにより、肝臓の浄化にも役立ちます。
血液循環を改善するので、お肌をきれいにし、脂性肌を治療し、ニキビ、湿疹などの発疹の治療にも役立ちます。

2012年の観察研究によると72人の男性ボランティアは、ドリンクにレモングラスティーや緑茶のいずれかを与えられました。
レモングラスティーを飲んだ人は、収縮期血圧(血圧の上の数値)が適度に低下し、拡張期血圧が穏やかに上昇しました。
また、心拍数も大幅に低下しました。

・体内のインスリンのレベルを維持するのに役立ち、血糖の調整を助けます

・風邪、インフルエンザなどに

レモングラスには、抗菌性、抗真菌性に優れ、免疫力も高めるといわれています。
 その抗菌性から ・皮膚感染症 ・肺炎・血液感染症・ 腸感染症などに有効とされています。
また、口腔内の感染症や虫歯にもよいとされ、歯磨き粉などにもその成分が入っていたりします。
(2012年のin vitro試験によると、レモングラスのエッセンシャルオイルは、虫歯の原因菌である
ミュータンス連鎖球菌に対して抗菌力を示しました。レモングラスが自生している国では、
、歯の健康を改善し、口を清潔に保つ方法としてレモングラスの茎を噛むそうです)

また、呼吸器系への作用から、風邪、咳、インフルエンザなどの感染症にも有効といわれています。

レモングラスとクローブ・ウコンをブレンドしたお茶は粘液と痰の蓄積を分解するのに効果的です。

レモングラス、トゥルシ、カルダモンの組み合わせも、風邪やインフルエンザ、咳などの胸部感染症の
治療法としてアーユルヴェーダでは一般的な治療法です。
(インドでは、この度のコロナ対策としても、このハーブの組み合わせを推奨しています。)

また抗真菌性から酵母(白癬)のような真菌感染症にも有効です。

・抗炎症作用 レモングラスの有効成分シトラールは抗炎症化合物で、関節炎などの慢性の炎症を緩和、痛みを和らげます。
(メモリアルスローンケタリングキャンサーセンターによれば、レモングラスの主な成分であるシトラールと
ゲラニアールの2つ化合物は心臓病や脳卒中を含む多くの症状の原因である炎症に対して抗炎症効果を持つだろうということです。)
これらの化合物は、特定の炎症を引き起こすマーカーの放出を止めるのを助けると言われています。)

・痛みを和らげる 
 レモングラスに含まれるオイゲノールは、アスピリンのような機能を持ち、頭痛や片頭痛の痛みを和らげる作用があります。
 また月経の痛みを和らげます。

また、気分・睡眠・食欲・認知機能のバランスを調整するのにも役立ちます。

・抗酸化特性 細胞に損傷を与えるフリーラジカルを補足するのを助ける
ournal of Agriculture and Food Chemistryで発表された研究によると、
レモングラスにはいくつかの抗酸化物質が含まれており、体内のフリーラジカルを除去するのに
役立ちます。注目すべき抗酸化物質は、クロロゲン酸、イソオリエンチン、およびスウェルチアポポニンです。
これらの抗酸化物質は、冠状動脈内の細胞の機能障害を防ぐのに役立ちます。

・癌のリスクを減らすかもしれません
レモングラスのシトラールは、いくつかの癌細胞株に対して強力な抗癌能力を持っていると考えられています。
これは、細胞死を直接引き起こすか、免疫系を増強することによって機能すると考えられています。
 ある研究によると、タイでは胃がんの発症率がとても低いそうです。それは、こぶミカンやレモングラスを使った料理を
多くとることに理由があるという話でした。一つには消化機能を正常に保つ力によって胃粘膜も正常に保たれることに
理由があるかもしれません。

さらに、胃がんの主原因の一つであるピロリ菌に対しても、何らかの作用を持っているのかもしれません。

東アジアにいるピロリ菌は病原性が強く、日本人や韓国、中国では、胃がんの発症率が高いです。
それに対して、欧米ではピロリ菌は弱毒性であり、ピロリ菌由来の胃がんの発症率は低いとされています。
それなのに、タイやインドではピロリ菌は病原性が低く、胃がんの発症率も人口10万人当たりで
日本の1/10ほどだといわれています。
https://www.gastro-health-now.org/wp/wp-content/uploads/2014/01/gastroHealthNow19.pdf

なぜ、そうなのかは、わかっていませんが、食べもので体内の細菌叢は変化するので、
もしかしたらレモングラスを含むスパイス使いなどによって、腸内細菌叢が変化した結果なのかもしれません。
これは、全くの憶測ですが、タイ、インドネシア、インドなど、アーユルヴェーダ文化圏ではピロリ菌の病原性が低いことは
何かこのような理由が隠されているのかもしれないと、勝手に思ってます(*^-^*)

(レモングラスティーは、化学療法や放射線療法の補助療法として使用されることがあります。
腫瘍専門医の指導のもとでのみ使用してください。)

・赤血球レベルを高める
2015年の研究結果は、レモングラスティーを毎日30日間飲むと、ヘモグロビン濃度、および体内の赤血球数が
増加する可能性があることを示唆しています。

研究者らは、最初に105人の血液検査を行い、その後、研究の10日目と30日目に血液検査を行いました。
彼らはレモングラスティーを飲むと赤血球の形成を促進すると結論付けました。

彼らはレモングラスがどのような作用機序によってこの結果を導いたか明確にできませんでしたが、
抗酸化特性が関連しているのだろうと示唆しました。

・考えられる副作用とリスク

レモングラスは、お茶や食品でつかう量では安全であると一般的に考えられています。
ただし、イネ科植物にアレルギーがある場合や、妊娠中・利尿薬を処方されている・心拍数が低い
腎臓に疾患がある・化学療法を受けている場合には使用を控え、お医者様に相談しましょう。
また、血糖値を下げることが知られていますので、糖尿病などで血糖値を下げるお薬を飲まれている場合も注意が必要です。

以下のサイトでは現代医学的な実験によって裏付けられた治療的使用の科学的根拠が示されています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3217679/

非常に専門的ですので、ここで示された効果だけを一覧で書き出しました。
本当にいろんな実験をしていてすごいです。
その根拠や実験の仕方など、興味のある方はリンク先に移動して読んでみてくださいね。

・抗アメーバ効果・抗菌活性・下痢止め活性・抗フィラリア活性・抗真菌活性・抗炎症作用
・抗マラリア活動・抗変異原性(がん細胞の転移の予防)・抗マイコバクテリア活性
・抗侵害効果[ 57 ]・抗原虫活性・殺ダニ活動・フリーラジカルスカベンジャーと抗酸化作用・コレステロール低下作用(用量依存的である)[ 61 ]・血糖降下作用と脂質低下作用・殺虫活動・神経行動学的効果(鎮静/催眠活動・抗不安作用・抗けいれん作用