高血圧とアーユルヴェーダ

(書きかけの項目です。またご利用にあたっては自己責任でお願いします。もだま工房で扱っているハーブも含まれますが、あくまで、アーユルヴェーダではこのように考えられているという紹介であり、もだま工房のハーブに医学的効果効能があることを示すものではありません。)

高血圧に効果的なハーブを教えて欲しいという質問をとてもたくさんいただきます。

アーユルヴェーダでは症状に対しても大切ですが、その人自身の体質に応じた処方がされますので、「このハーブを摂ればいいです」と簡単に説明するのはとても難しいです。

そのことについては後ほど解説します。

それを前提にした上で、以下に現代医学的な簡単な高血圧についての考え方とアーユルヴェーダのハーブを紹介しますので、ご参考になりましたら幸いです。

なお、アーユルヴェーダハーブの中には、その特定の植物化学物質から、現代医学の高血圧の薬がつくられているくらい、強力なものも含まれます。そのようなものは、薬機法による制限もありますので、制限されている植物には(薬)と記しておきますので、もし使用するなら、医師の指示のもとに使用してください。

1高血圧の原因

・高血圧の主な原因は、本態性高血圧と二次性高血圧に分けられます。

本態性高血圧: 日本人の高血圧の約9割を占め、原因が特定できない高血圧です。遺伝的要因に加え、塩分の過剰摂取、肥満、喫煙、運動不足、ストレス、そして飲酒などの生活習慣が複合的に影響して発症すると考えられています。

このように実はほとんどの高血圧は原因を特定できていません。ですので、「高血圧の薬」で血圧を下げてしまうのは、ある意味、「ちから技」といえるでしょう。
もちろん、そうすることの方が、何も対処しないよりも安全だということでそう処方されるわけですから、自己判断による断薬は危険です。

ただ、後ほど紹介するアーユルヴェーダ的な理解を持つなら、もしかしたら、現代医学と併用して、より効果的に薬を減らすことができたり、多くの場合有益だと考えられますで最後まで読んでくれたらうれしいです。

・二次性高血圧: 特定の病気(腎臓病、内分泌系の病気など)や薬剤が原因で引き起こされる高血圧です。

2高血圧の治療に対する考え方

現代医学による標準治療
現代医学では、高血圧は心臓病や脳卒中などの重篤な病気を引き起こすリスクを減らすために、血圧を管理すべき慢性疾患として捉えられています。

非薬物療法(生活習慣の修正): 
食事: 減塩(1日6g未満)、野菜や果物の積極的な摂取、動物性脂肪の制限。

運動: 有酸素運動を習慣的に行う。

その他: 節酒、禁煙、適正体重の維持、ストレス管理。

薬物療法: 生活習慣の改善でも血圧が十分に下がらない場合や、リスクが高いと判断された場合に降圧薬が処方されます。
薬は、血圧が上がる原因そのものを治すのではなく、上がった血圧を下げる役割を果たしています。ですので薬の服用をやめてしまうと、この抑制がなくなるため、元の血圧が高い状態に戻ってしまうことがほとんどです。これにより、再び脳卒中や心筋梗塞といった合併症のリスクが高まります。

しかし、全ての場合で一生涯同じ量を飲み続けるわけではありません。
生活習慣の徹底的な改善(後ほど紹介するアーユルヴェーダのハーブなどもここに含まれます。日本で私たちが医師の処方によらずに使えるハーブは薬の代用とはとらえないでください)と医師の指示のもとで薬を減らし、またやめることは十分可能といわれています。

3高血圧に良い食事

高血圧の食事療法で最も重要なのは減塩ですが、それだけでなく、血圧を下げる働きのある栄養素を積極的に摂ることが大切です。

ミネラルへの理解は食事療法を助けます。

血圧を上昇させるミネラル
ナトリウム(Na⁺)
ナトリウムの過剰摂取は、体内のナトリウム濃度を高くします。濃度を薄めるために水分が血管内に引き込まれることで、血液の量が増加し、血管にかかる圧力(血圧)が上がります。また、交感神経を活性化させ、血管を収縮させる作用もあります。

カルシウム(Ca²⁺)
カルシウムが不足すると、副甲状腺ホルモンが分泌されて血中のカルシウム濃度を維持しようとします。このホルモンは、血管の平滑筋細胞へのカルシウム流入を促進し、血管を収縮させるため、血圧が上昇する可能性があります。逆に、適度なカルシウム摂取は血圧を正常に保つ助けになると考えられています。

血圧を低下させるミネラル
カリウム(K⁺)
カリウムは、ナトリウムを体外に排出するのを助ける働きがあります。特に、腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制することで、尿と一緒にナトリウムの排泄を促し、結果的に血液量を減らして血圧を下げます。

マグネシウム(Mg²⁺)
マグネシウムは、血管を広げる作用があるため、血圧を下げる効果が期待できます。また、血管の収縮に関わるカルシウムの働きを調整し、血管の過剰な収縮を抑える作用もあります。これらの作用によって、血液の流れがスムーズになり、血圧が下がると考えられています。

カルシウムの項目がわかりづらいと思いますがナトリウムとカリウムが拮抗し、カルシウムとマグネシウムが拮抗すると覚えれば理解を助けるでしょう。カルシウムは必要ですから間違えないでください(*^-^*)。

1. 減塩
目標: 日本高血圧学会のガイドラインでは、1日の塩分摂取量を6g未満とすることが推奨されています。これは、健康な人の約10g/日という平均摂取量から大幅に減らす必要があります。

工夫: 香辛料、香味野菜(ショウガ、ニンニク、ネギなど)、酢、レモンなどの酸味を利用して薄味を補う。

めん類の汁は残す(汁を全て飲まないだけで2〜3gの減塩になります)。

加工食品(ハム、ソーセージ、練り物)や漬物、梅干しなどを控える。

だしをしっかり取ってうま味を活用する。

2. 積極的に摂りたい栄養素と食品
カリウム: ナトリウムを体外に排出する働きがあります。

食品: 野菜、果物、海藻類、きのこ類、イモ類、豆類など。

ポイント: カリウムは水に溶けやすいので、生で食べられるものは生で、汁物は煮汁ごと食べるのがおすすめです。

マグネシウム: 血管を拡張させる作用があります。

食品: 豆類、ナッツ類、海藻類、魚介類など。

カルシウム: 血圧を調整する働きがあります。

食品: 乳製品(低脂肪のもの)、小魚、豆腐、緑黄色野菜など。

食物繊維: ナトリウムを吸着して体外への排出を促すほか、コレステロールの吸収を抑える働きもあります。

食品: 野菜、きのこ類、海藻類、全粒穀物、豆類など。

高血圧の食事法として、「DASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)」が有名です。これは、減塩を基本としながら、カリウム、マグネシウム、カルシウム、食物繊維を豊富に含む食品を積極的に摂る食事法で、血圧を下げる効果が科学的に認められています。

4アーユルヴェーダの考え方

アーユルヴェーダにおける高血圧の根本原因

アーユルヴェーダでは、高血圧は単なる血圧上昇という症状ではなく、体内のバランス(ドーシャ)、消化力(アグニ)、そして毒素(アーマ)の乱れが複合的に絡み合った結果として捉えられます。主な原因は以下の通りです。

ドーシャの乱れ:

ピッタ(火)の増悪: 高血圧の最も主要な原因の一つです。怒り、ストレス、競争的な性格、辛い食べ物や揚げ物の過剰摂取は、ピッタを増悪させます。ピッタは熱と血液の循環を司るため、これが乱れると血液が熱を持ち、血管が硬くなり、血圧が上昇すると考えられています。

ヴァータ(風)の増悪: 不規則な生活、不安、睡眠不足、乾燥した食べ物などが原因でヴァータが増えます。ヴァータは動きと循環を司るため、これが乱れると血管が収縮し、血流が滞り、高血圧を引き起こします。特に、不安や神経質な性質を持つ人に多く見られます。

カファ(水)の増悪: 肥満、運動不足、甘いものや油っぽいものの過剰摂取によりカファが増えます。これにより、血管内に重くて粘着性のある物質が蓄積し、血流が悪化して血圧が上昇すると考えられています。

アグニ(消化の火)の低下: 消化力が低下すると、食べたものが十分に消化されず、未消化物であるアーマ(毒素)が体内に蓄積します。このアーマが血液や血管に付着することで、血流を妨げ、高血圧を引き起こします。

スロタス(Srotas)の閉塞: スロタスは、体内の栄養や老廃物を運ぶ微細な管やチャネルのことです。アーマやドーシャの乱れによってスロタスが閉塞すると、心臓や血管の機能が妨げられ、高血圧につながります。

アーユルヴェーダでは高血圧はRaktha-Gata VataとRakta-Uchcha-Raktchapという言葉で表現されることが多いです。

Raktha-Gata Vata
これは「血液に入ったヴァータ」を意味します。

Raktha (Rakta): 「血液」を指します。

Gata: 「入った」「移動した」という意味です。

Vata: アーユルヴェーダの3つのドーシャのうちの一つで、「風」や「動き」を司るエネルギーです。

Raktha-Gata Vataとは、ヴァータがその本来の場所(大腸など)から移動して、血液(Raktha Dhatu)に入り込んだ状態を指します。ヴァータは不規則な動きや収縮の性質を持つため、血液に入り込むと血管を収縮させたり、血流を妨げたりします。これにより、血液が流れる際の抵抗が強くなり、高血圧を引き起こすと考えられています。

これは主にヴァータ性高血圧の病態を説明する言葉であり、不規則な生活やストレス、過度な思考によってヴァータが増え、血管に影響を与えるケースに用いられます。

Rakta-Uchcha-Raktchap
これは「血液の高血圧」を意味し、現代医学における高血圧をより直接的に表現する言葉です。

Rakta: 「血液」を指します。

Uchcha: 「高い」という意味です。

Raktchap: 「血圧」を意味します。

Rakta-Uchcha-Raktchapは、特定のドーシャの乱れを直接的に示すのではなく、「血液の圧力が高い状態」という症状そのものを表す、より一般的な用語です。この言葉は、現代のアーユルヴェーダ医師や研究者が、現代医学の高血圧という概念を説明する際に、より広く用いられる傾向があります。

2つの言葉の違いと使い分け
この2つの言葉は、高血圧を指す言葉ですが、その焦点が異なります。

Raktha-Gata Vata: 病気の根本的な原因と病態生理(ヴァータの異常な移動)に焦点を当てた伝統的な用語です。この言葉が使われる場合、ヴァータを鎮める治療が特に重要視されます。

Rakta-Uchcha-Raktchap: 病気の症状そのもの(血圧が高い状態)に焦点を当てた、より現代的な用語です。原因がヴァータ、ピッタ、カファ、またはそれらの複合であるかに関わらず、高血圧全般を指す際に使われます。

簡潔に言うと、前者は「なぜ高血圧になったのか」というアーユルヴェーダ的診断を、後者は「高血圧という状態そのもの」を表現している、と理解していただければ良いでしょう。

個別のドーシャによる治療アプローチ
アーユルヴェーダの治療は、個人の体質(プラクリティ)と現在の状態(ヴィクリティ)を診断し、その原因となっているドーシャを特定することから始まります。

1. ピッタ性の高血圧
特徴: 怒りっぽい、イライラしやすい、脈拍が速い、顔が赤くなりやすい、熱を帯びやすい。

治療の原則: ピッタを鎮静させ、冷却する。

食事: 辛いもの、酸味、揚げ物、発酵食品を避け、甘く、苦く、渋い味の食べ物を増やす。ココナッツミルク、きゅうり、スイカなどが良いとされます。

ハーブ: ブラフミー、アルジュナ、シャタヴァリなど、冷却・鎮静作用のあるハーブを使用します。

生活習慣: 冷水での入浴、月光浴、瞑想、怒りやストレスを避けること。

2. ヴァータ性の高血圧

特徴: 不安、緊張、不眠、動悸、変動しやすい血圧。

治療の原則: ヴァータを鎮静させ、温め、安定させる。

食事: 乾燥した食べ物を避け、温かく、油分を含んだ、重い食べ物を摂る。規則正しい食事を心がける。

ハーブ: アシュワガンダ、トゥルシー、ヴァチャなど、鎮静作用のあるハーブを使用します。

生活習慣: 規則正しい睡眠、温かいオイルを使ったマッサージ(アビヤンガ)、瞑想。

3. カファ性の高血圧
特徴: 肥満、体重増加、むくみ、脈拍が遅い。

治療の原則: カファを減らし、体内の蓄積物を除去する。

食事: 甘いもの、塩分、乳製品、揚げ物を避け、辛く、苦く、渋い味の食べ物を増やす。

ハーブ: プナルナヴァ、ラロット、グッグル、トリカトゥ、センシンレン、アルジュナなど、利尿作用や代謝を促進するハーブを使用します。

生活習慣: 定期的な運動、特に有酸素運動を増やし、日中の睡眠を避ける。

アーユルヴェーダでは、このように個々の体質や病態に合わせて、食事、ハーブ、生活習慣、そしてオイルマッサージやデトックス(パンチャカルマ)などの療法を組み合わせることで、根本的な原因から高血圧を治療することを目指します。

また、アーユルヴェーダでは、病気が単一のドーシャ(エーカージャ)だけでなく、複数のドーシャが複合的に影響して起こる(ドヴァンドヴァジャ)場合が一般的です。高血圧も例外ではありません。

2つのドーシャが関与する場合、その治療法はより複雑になり、それぞれのドーシャの性質を考慮したアプローチが必要になります。特に高血圧と関連するドヴァンドヴァジャのパターンは以下の3つが考えられます。

4. ヴァータ・ピッタ性の高血圧
これは、最も一般的なドヴァンドヴァジャ性の高血圧パターンの一つです。

病態: ストレス、怒り、過労、不規則な生活が複合的に影響し、ヴァータとピッタの両方が増悪します。ヴァータの乾燥と収縮の性質が、ピッタの熱と血液の乱れと結びつき、血圧を上昇させます。

特徴:

ヴァータ由来: 動悸、不安、不眠、変動しやすい血圧。

ピッタ由来: イライラ、怒り、熱感、顔の紅潮。

これらの症状が組み合わさって現れます。

治療の原則: ヴァータとピッタの両方を鎮静させる必要があります。ヴァータの乾燥と冷たさを和らげるために油分を補い、ピッタの熱を冷やすアプローチを組み合わせます。

治療法:

食事: 辛いもの、揚げ物、乾燥した食べ物を避け、ギーやココナッツオイルなどを使った、甘く、油分を含んだ、冷却作用のある食べ物を摂ります。

ハーブ: アシュワガンダ(ヴァータ鎮静)、ブラフミー(神経鎮静)、アマラキ(ピッタ鎮静)などを組み合わせて用います。

パンチャカルマ: 外部からの油分補給(アビヤンガ)やバスティ(ヴァータ)、瀉血(ピッタ)などを、専門家の指導のもとで組み合わせます。

5. カファ・ピッタ性の高血圧
このパターンは、肥満や不健康な食生活(カファ)に、ストレスや怒り(ピッタ)が加わって生じます。

病態: カファの重くて油っぽい性質と、ピッタの熱が結びつきます。カファが血管内に詰まりを引き起こし、ピッタの熱がその血流の抵抗を強めて血圧を上昇させます。

特徴:

カファ由来: 肥満、むくみ、怠惰、重い感覚。

ピッタ由来: イライラ、熱感、発汗。

治療の原則: カファとピッタの両方をバランスさせる必要があります。カファを減らすために温め、代謝を促進し、ピッタを鎮めるために冷却するアプローチを組み合わせます。

治療法:

食事: 辛く、苦い味の食べ物を中心に摂り、甘く、塩辛く、酸っぱい味を避けます。

ハーブ: グッグル(カファ・コレステロールを減らす)、プナルナヴァ(利尿作用)、アマラキ(ピッタ鎮静)、センシンレン、アルジュナなどを組み合わせて用います。

パンチャカルマ: ヴァマナ(カファの排出)や瀉血(ピッタの排出)などが適応されることがあります。

6. ヴァータ・カファ性の高血圧
比較的まれなケースですが、不規則な生活や不安(ヴァータ)と、運動不足や重い食生活(カファ)が同時に影響して起こります。

病態: ヴァータの乾燥と不安定さ、カファの重さと停滞が結びつきます。血流が停滞し、神経系が不安定になり、血圧が変動します。

特徴:

ヴァータ由来: 不安、変動しやすい血圧、不眠。

カファ由来: むくみ、重さ、体重増加。

治療の原則: ヴァータとカファの両方をバランスさせる必要があります。カファの停滞を取り除くために温め、ヴァータの乾燥を和らげるために油分を補うアプローチを組み合わせます。

治療法:

食事: 温かく、消化しやすい食べ物を摂ります。乳製品や甘いものは避けます。

ハーブ: ジンジャー、ピッパリ(ヴァータとカファを減らす)、ラロット、アシュワガンダ(ヴァータ鎮静)、プナルナヴァ(カファ減らす)などを組み合わせて用います。

パンチャカルマ: 温かいオイルを使ったバスティ(ヴァータ鎮静)や、ナスヤ(鼻からの油分摂取)が有効な場合があります。

ドヴァンドヴァジャ性の治療では、どのドーシャがより優位に影響しているかを見極め、それぞれのドーシャを鎮めるハーブや療法を組み合わせるサンスリュシティ(Samsrushti)と呼ばれる治療法が用いられます。

サンスリュシティ(Samsrushti)とは
サンスリュシティ(Samsrushti)はサンスクリット語で「混合」「結合」を意味し、二つ以上のドーシャが同時に乱れている状態、またはその状態を治療するアプローチを指します。

アーユルヴェーダでは、健康な状態はヴァータ、ピッタ、カファの3つのドーシャが均衡を保っている状態だと考えられています。しかし、生活習慣の乱れやストレスなどによってこのバランスが崩れ、2つまたは3つのドーシャが同時に増悪することがあります。これを「ドヴァンドヴァジャ」(2つのドーシャの病気)や「サニパタジャ」(3つのドーシャの病気)と呼びます。

サンスリュシティとは、これらの複合的な病態を治療するために、それぞれの増悪したドーシャの性質を考慮し、バランス良く組み合わせた治療法を意味します。単一のドーシャの治療法を単純に足し合わせるのではなく、より複雑で個別化されたアプローチが求められます。

サンスリュシティの治療原則
サンスリュシティの治療では、以下の原則が重要視されます。

最も優位なドーシャの特定: まず、どのドーシャが最も強く病気に影響しているかを特定します。例えば、ヴァータ・ピッタ性の高血圧の場合、不安や不眠(ヴァータ)が主要な症状なのか、それとも怒りや熱感(ピッタ)が主要な症状なのかを見極めます。

相反する治療法の組み合わせ: ヴァータは「乾燥、冷たい」性質、ピッタは「熱い」性質、カファは「重い、冷たい」性質を持ちます。この相反する性質を持つドーシャが同時に乱れている場合、両方の性質を考慮した治療法が必要です。

治療の順序: 一般的に、アーユルヴェーダではまずヴァータを鎮静させ、その後にピッタやカファを治療することが推奨されます。これは、ヴァータが「動き」の原動力であり、他のドーシャの動きを司るためです。

例えば、ヴァータ・ピッタ性の高血圧を治療するサンスリュシティの具体例を見てみましょう。

ヴァータの治療: ヴァータの乾燥と不安定さを和らげるために、ギーやセサミオイルといった油分を多く含んだ食事やマッサージ(アビヤンガ)を行います。また、神経を落ち着かせるアシュワガンダやブラフミーといったハーブを用います。

ピッタの治療: ピッタの熱を冷やすために、ココナッツオイルやアムラキなど、冷却作用のあるものを取り入れます。

組み合わせ: これらの治療法を同時に、または適切なタイミングで組み合わせます。例えば、ヴァータを鎮めるためのバスティ療法を行った後に、ピッタを鎮めるために瀉血を行う、といった治療計画が立てられます。

このように、サンスリュシティとは、単に病気を治すだけでなく、患者の複雑な体質と病態を深く理解し、それに応じた個別の治療を組み立てる、アーユルヴェーダの奥深さを示す概念です。

さて、以上見てきたようにただ「高血圧」といっても その取り組みは人それぞれになります。
それが冒頭で述べた、アーユルヴェーダでは高血圧にいいハーブはどれ? に簡単に答えられない理由になります。
しかし、ここまで読んでくれたのなら、アーユルヴェーダの高血圧に対する考え方もとても深まっていることと思います。

以上をふまえた上でハーブを紹介させていただきます。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました(*^-^*)

5アーユルヴェーダハーブの利用

ヴァータ性の高血圧に良いハーブ
ヴァータを鎮静させ、神経を落ち着かせる作用のあるハーブが中心です。

Ashwagandha (アシュワガンダ): ヴァータを鎮める最強のハーブの一つで、ストレスを軽減し、神経系を強化します。(薬)

Brahmi (ブラフミー): 神経系を落ち着かせ、精神を安定させます。不眠や不安を伴う高血圧に特に良いとされます。

Jatamansi (ジャタマンシー): 神経系の鎮静作用が高く、心臓の動悸を落ち着かせます。(薬)

Shatavari (シャタバリ): 心身を滋養し、ヴァータの乾燥を和らげます。

Vacha (ヴァチャ): 精神を安定させ、ストレスを和らげます。(薬)

Valerian (バレリアン): 強い鎮静作用で、不眠や不安を緩和します。

Passionflower (パッションフラワー): 精神を落ち着かせる効果があります。

Ginseng (ジンセン): ストレス耐性を高め、心身のバランスを整えます。(薬)

ピッタ性の高血圧に良いハーブ
ピッタの熱を冷まし、炎症を抑える作用のあるハーブが中心です。

Amalaki (アマラキ): 強力な抗酸化作用と冷却作用で、血液の熱を取り除きます。

Arjuna (アルジュナ): 心臓の強壮剤として働き、血管の炎症を鎮めます。

Gotu Kola (つぼくさ): 血液を浄化し、血管の健康を維持します。

Sandalwood (サンダルウッド): 冷却作用により、怒りやイライラを伴う高血圧に良いとされます。(薬)

Rose (ローズ): 冷却作用でピッタを鎮静させ、精神を穏やかにします。

Guduchi (グドゥチ): 全身の炎症を抑え、ピッタを鎮めます。(薬)

Bhringaraj (ブリンガラージ): 肝臓を浄化し、ピッタを鎮める作用があります。

Hibiscus (ハイビスカス): 利尿作用と冷却作用で、血圧を下げます。

カファ性の高血圧に良いハーブ
カファの重さや停滞を取り除き、代謝を促進するハーブが中心です。

Guggul (グッグル): 悪玉コレステロールを減少させ、体内の重さや停滞を取り除きます。(薬)

Punarnava (プナルナヴァ): 強い利尿作用があり、むくみや体内の余分な水分を排出します。

Cinnamon (シナモン): 代謝を促進し、血管を拡張させます。

Ginger (ジンジャー): 消化の火(アグニ)を強め、体内の停滞を解消します。

Coriander (コリアンダー): 利尿作用とデトックス効果があります。

Fennel (フェンネル): 代謝を促進し、余分な水分を排出します。

Garlic (ガーリック): 血管を拡張させ、コレステロール値を下げる効果が期待されます。

. 神経系を安定させ、精神を安定させるグループ
これらのハーブは、ストレスや不安、不眠が原因で高血圧になっている場合に効果が期待されます。

Ashwagandha (アシュワガンダ), Withania somnifera(薬)

Brahmi (ブラフミー), Bacopa monnieri

Jatamansi (ジャタマンシー), Nardostachys jatamansi(薬)

Tulsi (トゥルシー), Ocimum sanctum

Valerian (バレリアン), Valeriana officinalis

Passionflower (パッションフラワー), Passiflora incarnata

Sandalwood (サンダルウッド), Santalum album(薬)

Rose (ローズ), Rosa centifolia

Shankhpushpi (シャンクプシュピ), Convolvulus pluricaulis

Vacha (ヴァチャ), Acorus calamus(薬)

Shatavari (シャタバリ), Asparagus racemosus

Kava (カヴァ), Piper methysticum(薬)

Nutmeg (ナツメグ), Myristica fragrans

2. 心臓の強壮剤としての力がある、または血流を改善するグループ
心臓の機能そのものを強化したり、血行を改善したりすることで血圧をコントロールします。

Arjuna (アルジュナ), Terminalia arjuna

Hawthorn (ホーソーン), Crataegus laevigata

Gotu Kola (つぼくさ), Centella asiatica

Nagkesar (ナーガケーサル), Mesua ferrea

Ginseng (ジンセン), Panax ginseng(薬)

Ashoka (アショーカ), Saraca indica

Bala (バラ), Sida cordifolia(薬)

Bilva (ビルヴァ), Aegle marmelos

3. 抗酸化・抗炎症作用により血管の健康を維持するグループ
血管の細胞を保護し、動脈硬化の進行を防ぐことで血圧の安定に寄与します。

Amalaki (アマラキ), Phyllanthus emblica

Garlic (ガーリック), Allium sativum

Cinnamon (シナモン), Cinnamomum zeylanicum

Ginger (ジンジャー), Zingiber officinale

Turmeric (ターメリック), Curcuma longa

Yarrow (ヤロー), Achillea millefolium

Hawthorn (ホーソーン), Crataegus laevigata

Guggul (グッグル), Commiphora wightii(薬)

4. 全身のアーマ(毒素)を浄化し、バランスを整えるグループ
体内に蓄積した毒素を排出することで、間接的に血圧を含む全身のバランスを整えます。

Guduchi (グドゥチ), Tinospora cordifolia(薬)

Haritaki (ハリタキ), Terminalia chebula(薬)

Manjistha (マンジスタ), Rubia cordifolia(薬)

Pippali (ピッパリ), Piper longum

Kutki (クトゥキ), Picrorhiza kurroa(薬)

Vidanga (ヴィダンガ), Embelia ribes(薬)

Ipomoea (トリヴリッタ), Ipomoea turpethum

Bilva (ビルヴァ), Aegle marmelos

5. 体内の過剰な水分や毒素を排出するグループ
利尿作用により、血液量を減らすことで直接的に血圧を下げる効果が期待されます。

Punarnava (プナルナヴァ), Boerhavia diffusa

Gokshura (ゴクシュラ), Tribulus terrestris(薬)

Coriander (コリアンダー), Coriandrum sativum

Fennel (フェンネル), Foeniculum vulgare

Parsley (パセリ), Petroselinum crispum

Celery (セロリ), Apium graveolens

Lemon Grass (レモングラス), Cymbopogon citratus

Shatapushpa (シャタプシュパ), Anethum graveolens

Yashtimadhu (ヤシュティマドゥ), Glycyrrhiza glabra (ただし、過剰摂取は注意)

6. 肝臓の健康をサポートするグループ
肝臓の機能が改善することで、体内のバランスが整い、間接的に血圧の安定につながります。

Bhringaraj (ブリンガラージ), Eclipta prostrata

Kutki (クトゥキ), Picrorhiza kurroa(薬)

7. 血管を拡張させるグループ
血管を広げることで、血液の流れをスムーズにし、血圧を下げる効果が期待されます。

Sarpagandha (サルパガンダ), Rauvolfia serpentina(薬)

Cinnamon (シナモン), Cinnamomum zeylanicum

Celery (セロリ), Apium graveolens

Garlic (ガーリック), Allium sativum

Yarrow (ヤロー), Achillea millefolium

Ginger (ジンジャー), Zingiber officinale

Ajamoda (アジョワン), Trachyspermum ammi

Hibiscus (ハイビスカス), Hibiscus sabdariffa