LDLコレステロールとアーユルヴェーダ

現代医学からみたLDLコレステロール

1. 高すぎる場合のデメリット

LDLコレステロールは「悪玉コレステロール」と呼ばれ、血中のコレステロールを全身へ運ぶ役割を担っています。しかし、過剰になると血管壁に蓄積し、動脈硬化を進行させます。動脈硬化が進行すると血管が硬くなり、プラークと呼ばれるコブが形成されます。このプラークが破れて血栓ができると、血管が詰まり、以下のような重篤な疾患を引き起こすリスクが高まります。

心筋梗塞 / 狭心症 :心臓の血管が詰まり、心臓の筋肉に血液が供給されなくなることで起こります。

脳梗塞 :脳の血管が詰まり、脳細胞が壊死することで起こります。

これらは自覚症状がないまま進行することが多いため、定期的な健康診断が重要です。

また、若い人にも是非知っておいてもらいたいことが、動脈硬化は加齢によって起きる問題ではなく、生活習慣によって、若いうちからでも進行し、プラーク(血管壁の肥厚)が形成されてしまうと元に戻ることはむずかしいということです。

ですので、ある臨界を越えるまでは放っておいても大丈夫 と考えるのではなく、血管の年齢を若く保つ習慣を持っていて欲しいということです。ちなみに臨床例を調べてみると、5歳未満でも心筋梗塞を発症した例も出てきますし、プラークが血管内に形成される初期病変は、10代や20代の若者でも見つかることが、病理学的な研究で確認されています。

また、動脈硬化は不可逆的な変化ではありますが、測定した結果が悪かったとしても、諦めるべきではありません。生活習慣の改善は、「動脈硬化を元に戻す」ことよりも、「動脈硬化の進行を止め、プラークを安定させ、心筋梗塞や脳梗塞といった病気を防ぐ」という、より重要な目的のために行われます。

動脈硬化がすでに進んでいると診断された場合でも、医師と相談しながらLDLコレステロールを下げるための食事、運動、そして必要に応じて薬物療法を継続することで、血管の内皮細胞の働きを活発にし、血管の拡張機能を回復させる効果があります。将来の健康を守るための最も効果的な方法です。

2. 低すぎる場合のデメリット

LDLコレステロールは、細胞膜の構成成分や、副腎皮質ホルモン、性ホルモン、ビタミンDなどの重要なホルモンの原料となります。そのため、低すぎると以下のような影響が考えられます。

免疫機能の低下:細胞膜の安定性が失われ、免疫機能が低下する可能性があります。

脳出血のリスク増加:血管壁がもろくなり、脳出血のリスクが高まる可能性があります。

脂溶性ビタミンの吸収不良:ビタミンA、D、E、Kなどの脂溶性ビタミンの吸収が悪くなり、さまざまな体調不良を引き起こす原因となります。

現代の日本ではLDLコレステロールが高くて悩んでいる方のほうが圧倒的に多いので、以下高い人のための考え方をまとめました。

現代医学での対処法

1. LDLコレステロールが高い場合の対処

高すぎるLDLコレステロールの治療は、動脈硬化性疾患を予防することが目的です。

生活習慣の改善:まず基本となるのは、食事療法と運動療法です。

食事療法:飽和脂肪酸やコレステロールを多く含む食品(肉の脂身、乳製品、卵黄など)を控え、食物繊維や不飽和脂肪酸(魚、大豆製品など)を積極的に摂取します。

運動療法:有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)を毎日30分以上行うことが推奨されています。

薬物療法:生活習慣の改善で効果が見られない場合や、動脈硬化性疾患のリスクが高い場合は、薬物療法が開始されます。

スタチン系薬剤 (statin):最も広く使用される薬剤で、肝臓でのコレステロール合成を抑制し、LDLコレステロール値を強力に下げます。

PCSK9阻害薬 (PCSK9 inhibitor):スタチン系薬剤で十分な効果が得られない場合などに使用される注射薬で、LDL受容体の分解を抑え、血中のLDLコレステロールを減少させます。

小腸コレステロールトランスポーター阻害薬 (ezetimibe):小腸でのコレステロール吸収を抑制します。

LDLアフェレーシス (LDL apheresis):重度の遺伝性高コレステロール血症など、薬物療法でもコントロールが困難な場合に、血液中のLDLコレステロールを体外で選択的に除去する特殊な治療法が行われることがあります。

薬物療法の開始基準は、単にLDLコレステロールの値だけで決まるわけではなく、その人が将来、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患を発症するリスクがどのくらいあるかによって個別的に判断されます。

LDLコレステロールを高くする主な原因
飽和脂肪酸の過剰摂取:動物性の脂身(肉の脂身、鶏肉の皮、バターなど)や乳製品、インスタント食品、菓子類に多く含まれます。肝臓でのコレステロール合成を促進し、LDLコレステロール値を上げます。

トランス脂肪酸の摂取:マーガリンやショートニング、それらを使用したパン、菓子、揚げ物などに含まれます。飽和脂肪酸以上にLDLコレステロールを増やし、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を減らす作用があるとされています。

コレステロールの過剰摂取:卵黄、魚卵、レバー、イカ、エビなどに多く含まれます。以前はコレステロール摂取量と血中コレステロール値の関連が強く指摘されていましたが、現在は飽和脂肪酸の摂取量の方が重要であると考えられています。しかし、過剰な摂取は避けるべきです。

食物繊維の摂取不足:食物繊維は腸内で余分なコレステロールの吸収を妨げる働きがあります。

肥満:内臓脂肪の蓄積は、中性脂肪を増やし、LDLコレステロール値を上げ、HDLコレステロール値を下げる原因となります。

運動不足:運動は中性脂肪を減らし、HDLコレステロールを増やす効果があります。

LDLコレステロールを下げるための食事療法

1. 積極的に摂るべき食品

不飽和脂肪酸

一価不飽和脂肪酸:オリーブオイル、アボカド、ナッツ類などに含まれ、LDLコレステロールを下げる効果があります。

多価不飽和脂肪酸(特にn-3系脂肪酸):サバ、イワシ、サンマなどの青魚に多く含まれるEPA (eicosapentaenoic acid) やDHA (docosahexaenoic acid) は、中性脂肪を減らすとともに、LDLコレステロールの値を改善する効果が期待されます。

食物繊維

水溶性食物繊維:水に溶けてゲル状になり、腸内でコレステロールや糖の吸収を穏やかにします。大麦、海藻、きのこ、こんにゃく、ごぼう、アボカドなどに多く含まれます。

不溶性食物繊維:腸を刺激して便通を良くし、有害物質の排出を促します。玄米、穀類、野菜、豆類などに多く含まれます。

大豆製品:豆腐、納豆、豆乳など。大豆に含まれる大豆たんぱく質には、血中コレステロールを低下させる働きがあります。

野菜・果物:特に緑黄色野菜や色の濃い野菜、果物。ビタミン、ミネラル、抗酸化物質が豊富で、動脈硬化の予防に役立ちます。

2. 避けた方が良い食品

肉の脂身、皮:牛・豚のバラ肉、鶏肉の皮など。

加工肉:ソーセージ、ベーコン、ハムなど。

乳製品:バター、生クリーム、チーズ(種類によっては)、牛乳(成分無調整)。

お菓子、菓子パン:生クリームやバターを多く使ったケーキ、クッキー、スナック菓子。

インスタント食品、ファストフード:ラーメン、カップ麺、フライドポテトなど。

3. 食べ方の工夫

主食を工夫する:白米を玄米や麦ごはんに変える、パンを選ぶ際は食物繊維が豊富な全粒粉のものを選ぶ。

調理法を見直す:揚げ物や炒め物(多量の油を使う)を控え、蒸す、茹でる、焼く、煮るなどの調理法を増やす。

脂質の少ない部位を選ぶ:肉はヒレやササミなど、脂身の少ない部位を選ぶ。

コレステロール豊富な食品:卵は一日1個までを目安にするなど、過剰摂取に注意する。

食事の順番を意識する:食物繊維が豊富な野菜やきのこ類を先に食べることで、コレステロールの吸収を抑える効果が期待できます。

よく噛んで食べる:満腹感を得やすくなり、食べ過ぎを防ぎます。

間食は控える:お菓子やジュースを控える代わりに、ナッツ類や果物を少量摂るようにする。

これらの食事療法を、適度な有酸素運動と組み合わせることが、LDLコレステロール値を改善する上で最も効果的です。

アーユルヴェーダの基本的な考え方

アーユルヴェーダは、単一の症状を治療するのではなく、個人の体質(ドーシャ)のバランスを整えることを重視する伝統医学です。したがって、LDLコレステロールが高いという状態は、単なる「数値の問題」ではなく、体内の「ドーシャの乱れ」として捉えられます。

LDLコレステロール値が高くなるのは、主にカパ・ドーシャの乱れ(過剰)が原因と考えられています。

カパの特性:重い、冷たい、遅い、湿潤といった性質を持ち、体内では水や脂肪、粘液などを司ります。

カパの乱れ:カパが過剰になると、体重増加、むくみ、怠惰、そして体内の循環路(ストータス)に脂肪や粘液が蓄積しやすくなります。これが、高コレステロールや動脈硬化の原因につながると考えられています。

アーユルヴェーダにおける対処法

現代医学と同様に、食事、運動、生活習慣の改善が基本となりますが、アーユルヴェーダ独自の視点やハーブが用いられます。

1. 食事療法と生活習慣の改善

カパを鎮静させる食事:カパは「重い」性質を持つため、軽くて温かい、消化しやすい食事を摂ることが推奨されます。

避けるべきもの:重い、油っこい、甘い、冷たい食品(乳製品、肉の脂身、揚げ物、冷たい飲み物など)。

推奨されるもの:辛味、苦味、渋味のある食品。新鮮な野菜、豆類、全粒穀物、スパイス。

食事の摂り方:規則正しい時間に食事を摂り、夜遅い時間の食事や食べ過ぎを避けます。

運動:カパは停滞しやすいため、活発な運動で体を動かし、代謝を高めることが重要です。特に、早朝の運動が推奨されます。

2. 推奨される薬草やハーブ

アーユルヴェーダでは、以下のようなハーブがコレステロール値の改善や、カパ・ドーシャのバランス調整に役立つとされています。

アルジュナ (Terminalia arjuna) の樹皮。心臓の強壮剤として知られ、心臓の健康をサポートするとともに、LDLコレステロールや中性脂肪を減らす効果も期待されています。

プナールナヴァ:(Boerhavia diffusa)。強力な利尿作用を持ち、体内の余分な水分や毒素を排出するのに役立ちます。

有効性:アルジュナは心臓と血管に直接働きかけるのに対し、プナールナヴァは体内の水分代謝を促し、むくみや停滞したカパを軽減します。この2つを併用することは、心臓の健康を直接サポートしつつ、LDLコレステロールの根本原因であるカパの過剰を排出するという点で、非常に理にかなったアプローチです。

トリファラ:アムラ、ハリータキー (Haritaki)、ビビータキー (Bibhitaki) の3つの果実を組み合わせたもの。体内の浄化(デトックス)を促し、消化器系の健康をサポートすることで、間接的にコレステロール値の改善に寄与すると考えられています。

トゥルシー: (Ocimum tenuiflorum)。「ホーリーバジル」。ストレス軽減(アダプトゲン作用)、抗酸化、抗炎症作用を持つことで知られています。カパ・ドーシャのバランスを整え、代謝を促進するため、LDLコレステロールの管理に有効です。

レモングラス:Cymbopogon citratus 消化促進、抗炎症、解熱作用があります。爽やかな香りは気分をリフレッシュさせ、消化を助けます。特に食後に飲むと、消化不良やガスを軽減するのに役立ちます。カパを鎮静させるため、脂肪の代謝を助ける効果も期待できます。

ポルパラ  主にタイや東南アジアの伝統医学で使われるハーブで、抗酸化作用や血糖値の調整に役立つとされています

モリンガ Moringa oleifera 非常に栄養価が高く、「奇跡の木」とも呼ばれます。LDLコレステロールと中性脂肪を減少させ、HDLコレステロールを増加させる研究結果が報告されています。お茶として飲むことで、豊富な抗酸化物質と栄養素を摂取でき、心血管系の健康を強力にサポートします。

クスリウコン 肝臓の働きをサポートし、胆汁の分泌を促すことで、体内のコレステロール代謝を助けます。LDLコレステロールの低下効果も研究で示されています。お茶として飲む際は、吸収を高めるために少量の黒胡椒と一緒に摂取することが推奨されます。

グッグル (Commiphora mukul) の樹脂。アーユルヴェーダにおいて、コレステロール値や中性脂肪の改善に最も広く使われるハーブの一つです。体内の毒素や余分な脂肪を排出し、代謝を活性化させる作用があるとされます。カパ・ドーシャを特に鎮静させると言われています。

アムラ (Phyllanthus emblica)。抗酸化作用が非常に高いことで知られ、ビタミンCも豊富です。アーユルヴェーダでは、体全体の若返り(ラサヤナ)に用いられます。LDLコレステロールを減少させ、HDLコレステロールを増加させる働きが研究されています。

アグニマンタ(Premna serratifolia )Lは、消化器系の働きを活発にし、体内の**未消化物(アーマ)**の蓄積を防ぐことで、カパ・ドーシャの過剰を抑制します。この作用は、間接的にLDLコレステロールの問題に対処する上で有効です。特に、代謝が落ちている人や、消化不良を起こしやすい人にとって、大きな助けとなるでしょう。

ギムネマ Gymnema sylvestre ギムネマは主に血糖値のコントロールに利用されますが、一部の研究では、肝臓での脂質合成を抑制し、コレステロールレベルを低下させる作用も示唆されています。

西洋タンポポ Taraxacum officinale ヨーロッパや北米で古くから薬草として使われてきたハーブです。特に、根は肝臓の機能を高め、胆汁の分泌を促進する作用があるとされています。これにより、体内のコレステロールの排出が促され、血中コレステロール値の改善に繋がると考えられています。

アーティチョーク Cynara scolymus アーティチョークの葉に含まれる「シナリン」という成分が、肝臓でのコレステロール合成を抑制し、胆汁の分泌を促す作用があるとされています。これにより、体内のコレステロール代謝が改善され、血中のコレステロール値を下げる効果が期待されます。また、肝臓を保護し、解毒機能を高める働きもあります。

サイリウムPlantago ovata  オオバコ科の植物の種子の殻で、非常に豊富な水溶性食物繊維を含んでいます。水に溶けるとゲル状になり、小腸内でコレステロールや胆汁酸を包み込んで体外への排出を促します。これにより、コレステロールの吸収が抑制され、LDLコレステロール値が低下するとされています。

フェヌグリーク Trigonella foenum-graecum 種子には、ガラクトマンナンという水溶性食物繊維が豊富に含まれています。この食物繊維が、コレステロールの吸収を妨げ、血糖値の急激な上昇も抑える働きがあるとされています。

シャタヴァリは、主に女性ホルモンのバランスを整えたり、滋養強壮に用いられるハーブですが、シャタヴァリン (Shatavarin) と呼ばれるステロイド系サポニンが豊富に含まれています。そのサポニン成分は以下のような働きも持つとされています。

コレステロール吸収抑制: 他の植物由来のサポニンと同様に、シャタヴァリのサポニンも小腸でコレステロールや胆汁酸を吸着し、体外への排出を促すことで、コレステロールの吸収を抑制する効果が期待できます。

抗酸化・抗炎症作用: サポニンには抗酸化作用や抗炎症作用があることも知られており、これが間接的に心血管系の健康をサポートすると考えられています。

スパイスやハーブの有効性

1. 食事の際のスパイス

トリカトゥ (Trikatu):ショウガ (Zingiber officinale)、長胡椒 (Piper longum)、黒胡椒 (Piper nigrum) の3つの辛味スパイスをブレンドしたもの。アーユルヴェーダで最も重要な消化促進剤の一つです。消化の火(アグニ)を強め、未消化物(アーマ)を燃焼させる働きがあります。カパ・ドーシャを鎮静させ、代謝を活性化させるため、LDLコレステロールの改善に有効です。

ヒングアシュタカチュールナ (Hingvashtaka Churna):ヒング(アサフェティダ/Ferula assa-foetida)、ショウガ、クミン、黒胡椒、岩塩などを含むブレンド。主に消化不良やガスの発生を抑えるのに使われますが、消化力を高めることで、間接的に代謝を助けます。

有効性:これらのスパイスは、食事の消化吸収を助けるだけでなく、体内の余分な脂肪や毒素の排出を促すため、カパのバランスを整え、LDLコレステロールの改善に非常に有効です。

にんにく (Garlic): Allium sativum。強い辛味と温性を持つハーブで、消化を促進し、血行を改善する働きがあります。コレステロール値を下げる効果についても広く研究されています。

紅麹 (Red Yeast Rice) 中国の伝統的な発酵食品で、コレステロール合成に関わる酵素(HMG-CoA還元酵素)の働きを阻害する「モナコリンK」という成分を含んでいます。この作用は、コレステロール降下薬であるスタチン系薬剤と類似しており、そのため多くの研究が行われています。(日本では紅麹サプリメントによる健康被害が報告されましたが、その事件は青かび毒の異物混入によるものであり、紅麹自体の成分による被害ではありません。)

イノシトールヘキサリン酸 (Inositol hexaphosphate)、米ぬか、豆類、ナッツ、ゴマなどの植物に含まれる物質です。 一部の研究では、イノシトールヘキサリン酸が肝臓での脂質合成を抑制し、血中脂質レベルを改善する効果があると報告されています。サプリメントとしても利用されています。

オリーブオイル:オリーブオイルに含まれる植物ステロールは、コレステロールと化学構造が似ているため、小腸での吸収を競合的に阻害する働きがあります。また、一価不飽和脂肪酸もLDLコレステロール値を下げる効果があるとされています。

まとめ

アーユルヴェーダでは、LDLコレステロールが高い状態は、体質を構成する3つの要素「ドーシャ」のうち、特にカパ・ドーシャの過剰が根本原因と考えます。カパは「重い、冷たい、遅い」といった性質を持ち、過剰になると体内の代謝が滞り、老廃物や余分な脂肪が蓄積しやすくなります。この蓄積物が「アーマ」(未消化物)と呼ばれ、血中コレステロールの上昇につながるとされます。

したがって、アーユルヴェーダにおけるLDLコレステロールへの対処法は、単に数値を下げるのではなく、カパを鎮静させ、消化の火「アグニ」を強めることに焦点を当てます。

生活習慣改善の役割

進行の抑制
LDLコレステロール値が高く、血圧や血糖値が高い状態が続くと、プラークは徐々に大きくなり、血管の内腔を狭めます。食事療法や運動療法、禁煙などによってこれらのリスク因子を改善することで、プラークの肥大化を防ぎ、動脈硬化の進行を抑制することができます。

プラークの安定化
動脈硬化の怖い点は、プラークが破裂して血栓ができ、血管が詰まってしまうことです。プラークには、破裂しやすい不安定なプラークと、破裂しにくい安定したプラークがあります。生活習慣の改善によって、不安定なプラークを安定化させ、破裂のリスクを減らすことができます。特にLDLコレステロール値を低く保つことが、この安定化に大きく寄与します。

血管機能の改善
生活習慣の改善は、血管の内皮機能(血管壁の一番内側にある細胞の働き)を改善することがわかっています。内皮は、血管を拡張させたり、血小板の凝集を抑えたりする物質を分泌しており、その機能が正常に保たれることで、血流が改善し、動脈硬化の進行を間接的に遅らせることができます。

動脈硬化は不可逆的な変化ではありますが、だからといって諦めるべきではありません。生活習慣の改善は、「動脈硬化を元に戻す」ことよりも、「動脈硬化の進行を止め、プラークを安定させ、心筋梗塞や脳梗塞といった病気を防ぐという、より重要な目的のために行われます。

動脈硬化がすでに進んでいると診断された場合でも、医師と相談しながらLDLコレステロールを下げるための食事、運動、そして必要に応じて薬物療法を継続することが、将来の健康を守るための最も効果的な方法です。

血管内壁の健康を保つためのハーブとして、LDLコレステロールに対する効果は限定的といえますが、ツボクサは非常に有効です。アーユルヴェーダでは精神的な健康や記憶力の向上に用いられてきましたが、血管に対する働きも注目されています。

ツボクサの血管への働き
ツボクサは、血管の構成成分であるコラーゲンやエラスチンの合成を促し、血管壁を強化する働きがあるとされています。これにより、血管の弾力性を保ち、動脈硬化の進行を抑制する効果が期待できます。特に静脈瘤や毛細血管の脆弱性に対する研究が多く行われています。

LDLコレステロールに対する有効性
ツボクサがLDLコレステロールを直接的に下げる作用について、コレステロール合成や吸収抑制といったメカニズムに関する研究は、他のハーブ(ウコンやグッグルなど)に比べてまだ限定的です。

しかし、以下のような間接的な働きを通じて、LDLコレステロールの問題に対処する上で有効であると考えられます。

酸化LDLの抑制: ツボクサに含まれるトリテルペノイドやフラボノイドなどの成分には、強力な抗酸化作用があります。LDLコレステロールは、活性酸素によって酸化されると、より動脈硬化を進行させやすい「酸化LDL」に変化します。ツボクサの抗酸化作用は、この酸化LDLの生成を抑制することで、動脈硬化の予防に貢献すると考えられます。

抗炎症作用: 動脈硬化は、血管内壁の慢性的な炎症が原因の一つとされています。ツボクサの持つ抗炎症作用は、この炎症を鎮めることで、動脈硬化の進行を抑制するのに役立つ可能性があります。

以上見てきたように ツボクサは、LDLコレステロールの値を直接的に下げるというよりは、「血管壁を強化する」ことと、「酸化LDLの生成を抑制する」ことで、LDLコレステロールが引き起こす動脈硬化という問題に対して有効に働くハーブと言えます。

したがって、LDLコレステロール値が高い場合は、グッグルやウコンのような、より直接的にコレステロール値を下げる働きが期待されるハーブと組み合わせて摂取することが、より効果的であると考えられます。